網膜色素変性症

網膜内の視細胞が光を感受し,視細胞内の物質が変化することによって起こる電気信号が双極細胞,網膜神経節細胞に伝達され,さらに脳に到達することによって我々は光を感じることができます. 網膜色素変性はこの光を感受する視細胞の疾患です. 視細胞は桿体と錐体に分けられます.錐体は主に黄斑の中心である中心窩に存在し,暗所での感度が不良で明るい場所で反応し,色覚,視力に関与します. 桿体は中心窩から15-20度の範囲に多く存在し,暗所での感度が良好で,暗い場所で反応します.

網膜色素変性では,まず,桿体の障害によって,夜盲と周辺の視野障害が起こります. さらに進行すると錐体の障害によって,視力低下,色覚の低下が起こります. 原因はDNA異常によって視細胞そのもの,あるいは,視細胞と隣接する網膜色素上皮細胞の変性です. いくつかのタイプが存在し,常染色体劣性遺伝,常染色体優性遺伝,X連鎖劣性遺伝のほか,散発例も多くみられます. 現在,遺伝子治療,正常視細胞移植,網膜色素上皮細胞移植等が研究されていますが,治療までは至っていません. 現時点での治療は進行抑制が目的で,アダプチノール®の内服とサングラスの装用です.