眼窩の後ろ、脳の下側に海綿静脈洞と呼ばれる、脳からの静脈が集まってくる部分があります。この海綿静脈洞には眼球と眼窩の静脈も流れ込んでいます。この海綿静脈洞を脳への動脈である内頚動脈が通っているのですが、内頚動脈から海綿静脈洞へ出血することがあります。これが内頚動脈海綿静脈洞瘻(ないけいどうみゃくかいめんじょうみゃくどうろう)です。出血すると海綿静脈洞の圧力が高まり、眼窩、眼球の静脈がうっ血、さらには逆流して、典型的には、眼球突出、拍動性雑音、結膜充血(上の写真)の三症状が出現します。拍動性雑音は心拍に合わせて脈打つように患者自身にも聴くことができます。この三症状以外に、複視、眼圧上昇、視力低下の眼症状と、脳の静脈が逆流すると、耳鳴り、頭痛、めまい等が起こります。さらに、失明、脳出血による重篤な後遺症を引き起こすことがあります。内頚動脈海綿静脈洞瘻を起こる原因としては、動脈瘤破裂と外傷性があります。
同様な病気として、硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)があります。硬膜は脳を包んでいる膜で、この硬膜へ流れて行くべき動脈が直接静脈に流れる病気です。これが海綿静脈洞で起こると内頚動脈海綿静脈洞瘻と同じ症状が出現します。多くは原因不明で、中年女性に見られます。