網膜がその外側にある脈絡膜から剥がれる疾患です.網膜剥離には,裂孔原性網膜剥離,滲出性網膜剥離,牽引性網膜剥離の三つの病型があります.
裂孔原性網膜剥離
眼球の中には硝子体と呼ばれるゼリー状の物質が入っています.この硝子体のまわりに膜(硝子体膜)があります.(ゆで卵を想像してください.白身のまわりに薄い膜がありますが,白身に相当するのが硝子体,周りの薄い膜に相当するのが硝子体膜です.) ゼリー状の硝子体は年齢によって液化し,硝子体膜が網膜から剥がれます.この剥がれた硝子体膜が動いて,蚊が動いているように見える症状(飛蚊症)が出現します.硝子体が剥がれるのは正常ですが,硝子体膜が剥がれるときに網膜の一部も引っ張られて,破れたり(裂孔),穴が開く(円孔)ことがあります.(網膜格子状変性参照) これを,網膜裂孔と言います.網膜に裂孔,円孔が起こると,さらに,網膜の裏側に液化した硝子体が入り込みます.これが裂孔原性網膜剥離です. 症状として光視症,飛蚊症,霧視,視野障害などがあります.
剥離した部分には視野障害が残りますので,早期発見が重要です.網膜裂孔,裂孔原性網膜剥離の症状として飛蚊症が有名です. 飛蚊症のうち,特に,蚊が増えている場合は網膜裂孔,裂孔原性網膜剥離の可能性がありますので,早めに眼科を受診することが大切です.
網膜裂孔の段階で発見されれば,レーザー治療(網膜光凝固術)によって,90%から97%の割合で裂孔原性網膜剥離を予防できると言われています. 裂孔原性網膜剥離に至った場合では強膜内陥術,或いは,硝子体手術が必要です.
当院では網膜光凝固術を行っています.強膜内陥術や硝子体手術では入院手術が必要です.専門病院に紹介いたします.
牽引性網膜剥離
増殖糖尿病網膜症などによって硝子体に線維組織が作られ,この線維組織が収縮して網膜が引っ張れて剥がれる疾患です.手術は硝子体手術です.
滲出性網膜剥離
滲出性網膜剥離は網膜の周りの脈絡膜からの液体が網膜下に溜り,網膜が剥がれる疾患です.原因としてはぶどう膜炎である原田病などの自己免疫疾患,腫瘍性疾患などがあります.
三つの病型のうち,裂孔原性網膜剥離と牽引性網膜剥離は早急に外科的治療が必要です.