カルシウム受容体阻害薬Ca channel blocker (CCB)

カルシウム受容体阻害薬Ca channel blocker (CCB)

カルシウム受容体阻害薬(CCB)は緑内障視神経症の治療薬となりうるが、現在、緑内障治療や他の慢性神経変性疾患治療には至っていない。

生理的状態では神経の細胞内Ca濃度は100nMと細胞外の1-2mMに比べて非常に低い。このことによって、細胞内外の電気化学勾配が生まれ、様々な遺伝子を抑制及び活性化を調節することができる。これは、神経維持、長期記憶、シナプスの可塑性に必須である。
慢性神経疾患では通常の有効なCaシグナルは抑制され、過剰なCaがアポトーシス・カスケードを引き起こすと考えられている(グルタミン酸excitotoxityに関与)。

CCBは細胞膜でのCaの細胞内流入を低下し、細胞内Ca濃度を低下し、高血圧、狭心症、不整脈などの治療薬であるが、Caによるアポトーシス・カスケードを阻止することによって慢性神経疾患の治療薬として研究されている。緑内障では、このCCBによるCaアポトーシス・カスケードの阻止(神経保護)以外に、眼圧低下、網膜血流増加としても期待されている。

CCBとして、Nifedipine (商品名:アラダート), verapamil, nimodipine, nilvadipine (商品名:ニバジール), lomerizine (商品名:ミグシス、ラナス)が研究されている。

Nifedipine(アダラート): 緑内障による視野障害の改善があるとの報告(北澤)があるが、その後の複数の論文で否定されている。

Nimodipine: 正常眼圧緑内障患者における複数の前向き臨床試験で視野障害が改善するとの報告がなされている。Nimodipineは日本では認可されていない。

nilvadipine(ニバジール):緑内障患者の3年間の臨床試験で視野障害の進行が有意に抑制され、脈絡膜の脈絡膜と視神経の血流が約35%上昇しているとの報告がある(新家)。新家教授の最終講義での演題でもあった。

Lomerizine(ミグシス、テラナス):動物モデルでlomerizineを投与すると、二次要因の物質であるET-1による視神経乳頭の血流低下を抑制できるとの報告がある(Toriu N. et.al)。他のCCBが高血圧の治療薬であるのに対して、lomerizineは片頭痛の治療薬であり、血圧低下の副作用が少ない。

RGCの死では細胞質へのCaの流入が見られるが、実際に重要なのは細胞間の相互作用によってRGCのアポトーシスが誘導されることだと考えられる。その一つとして、緑内障で損傷したRGCからグルタミン酸が過度に流出されるとastrocyteとglia細胞はグルタミン酸を吸収することができなくなる。このexcitotoxityによって、過剰活性化されたNMDA受容体とVGCCからCaイオンが細胞内に流入され、多量なフリーラジカルが産生され、酸化ストレスを引き起こす。

(livedoor akiastroのblogに2012年11月17日に投稿)