地球温暖化

「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は現状の温暖化ガスの排出ペースが続くと、2040年までに産業革命前に比べて1.5度上昇すると予測」、「産業革命前から世界の平均気温は既に1度上がり、10年あたり0.2度の割合で上昇を続けている」(日経朝刊 2018年10月6日)。ここで言う、産業革命前とは1750年頃の事だが、1750年から2040年まで290年間の気温変化がわずか1.5度とは思えない。

2年前の2016年11月3日に私の実家である長野県諏訪郡原村に帰省し、北八ヶ岳の坪庭に登り樹氷を見た(写真1)。非常に寒かったが、子供たちは初めて樹氷を見て感動していた。それから、昨年の11月5日と今年の11月3日にも帰省し、坪庭に登ったが、東京よりは寒いが、樹氷はなかった(写真2、今年11月3日撮影)。原村は標高1000メートルの高地で夏はエアコンなしで過ごすが、今年の夏の気温は30度を超え、農業はダメージを受けた。

写真1.北八ヶ岳坪庭の樹氷(2016年11月3日)
写真2.北八ヶ岳坪庭(2018年11月3日)


そこで、これまでの日本での気温の変化を調べてみた。気象庁のHPに各地の気象データを見ることができる。気象データはExelで書かれてあるので、そのデータを取り込んで調べることができる。図1は東京での各月と年平均のグラフ、図2は時系列を平滑化した10年running average。

図1 東京での気温の変化
図2 東京での気温の変化(10年running average)


東京の年平均気温は100年で2.3度上昇している。他の地点でも調べてみた。年平均の上昇は以下の通りだった。

東京2.3度/100年(1876年-2017年)
札幌 1.95度/100年(1877年-2017年)
松本 1.92度/100年(1898年-2017年)
名古屋 1.63度/100年(1891年-2017年)
大阪 2度/100年(1883年-2017年)
鹿児島 1.82度/100年(1883年-2017年)

気象庁のデータは1876年以降なので、それ以前の値は不明だが、上記を見ると1750年からは既に2度以上は上昇していると思われる。

今年の夏、当院ではエアコンの設定温度を26度とした。しかしながら、これを職員に指示しても、勝手に設定温度が下げられ、患者さんからも暑いとのクレームが来た。当院での設定温度がビルの廊下よりも高めなのは温暖化対策であることを示すポスターを貼ることによって、患者さんからのクレームは少なくなった。環境省では夏の設定温度は28度、冬は20度としているが、その通りやっている所は稀だろう。

今年も、政府は国民への節電要請を行っていなかった。その背景は、①省エネの意識が浸透しており、②電力の供給が十分に確保されているためだと主張している。国民に省エネの意識が浸透しているとは到底思えない。後者は確かに、原子力の代わりに、石炭と天然ガスによる発電を増加することによって確保しているが、これによって、CO2排出が増加しているのは明らかだ。

CO2排出の主要原因は、発電と、自動車などの運搬の二つ。発電については上で述べた通りだ。自動車については海外では電気自動車を推進しているが、日本では電気自動車をあまり推進していない。神奈川県では電気自動車導入補助金を平成24年に止め、その代わりに水素自動車(燃料電池自動車)に補助金を出している。東京都の小池都知事は晴海の東京オリンピック選手村の近くに巨大な水素ステーションを作り、これを日本での温暖化対策だと世界に発信しようとしている。神奈川県のHPには以下が書かれてある「本県では、次世代のエネルギーとして期待される「水素エネルギー」社会の実現に向けて、「燃料電池自動車(FCV)」の普及を推進しています。その一環として、県内でFCVを導入される方を対象に平成30年4月9日から、FCV導入費補助金の申請を受け付けています。」

水素(H2)を燃やしてエネルギーを得て、排出は水(H2O)で、CO2の排出はゼロであり、化学燃料を使っていないと主張しているものがある(水素・燃料電池実証プロジェクトHP)。ここで使用する水素は水素分子であるが、地球には水素原子はたくさんあるが、水素分子は殆ど存在せず、他の源から水素分子を作る必要がある。現在、水素分子を作るために天然ガスであるメタン(CH4)を使用して、CO2を排出している。「水素エネルギー」社会は「天然ガス由来のCO2排出エネルギー」社会に等しい。当然ながら、天然ガスが地球に無尽に存在するわけではなく、水素エネルギーが次世代のエネルギーになることは100%ない。

マスメディアは夏の気象現象を「猛暑」、「ゲリラ豪雨」などの言葉で呼んでいたが、温暖化についてのコメントは少なかった。今、暖冬になっているが、「ぽかぽか」、「過ごしやすい」等のコメントが殆どで、温暖化についてのコメントはない。日本のマスメディアと政策は温暖化対策を行うよりも、温暖化の主要原因だと考えられているCO2を排出している電力、ガス、自動車等の巨大企業を守っている。日本人も他国と同じように、地球温暖化対策について真剣に考えるべきだと思っている。私は自宅の屋根には太陽光発電を設置し、電気自動車を使っている。
(2018年12月1日 livedoor blog akiastroに投稿)